月夜に笑った悪魔
必死に暁の手から和正を離そうとする蒼真。
それでも暁は、ぐったりする和正の胸ぐらをつかんで離さない。
「美鈴ちゃん、ちょっと待っててね」
その姿を見た吉さんは私にそう言って、暁と蒼真へと走った。
そして。
「……あんまり使いたくないけど、ごめんね」
吉さんはポケットの中から何かを取り出し、それを暁の腕に刺した。
吉さんの手には──注射器。
それで何かを打たれた暁は……和正から手を離し、力が抜けたようにぐったり。
倒れそうな暁の体を、すぐに蒼真が支えた。
……いったい、何をしたのか。
わからないまま私はあとから到着した車に乗せられて、一条組の家まで送ってもらった。
落ちつかない心臓。
帰りの車の中で見た月は、やけに綺麗だったというのは覚えている。
忘れられない夜。