月夜に笑った悪魔
「……?」
ゆっくり顔を上げてみれば、彼は怒るわけでもなく大笑いしてる。
……なにがそんなにおかしいのか。
まじめな話しかしてないと思うんだけど?
「それで、スマホ投げつけられた暁はどうだった?それで殴るのやめた?」
笑いながら聞いてくる蒼真。
笑いすぎて目に涙まで溜まってる。
「とまってくれた、けど……そのせいで暁は頭から血が……」
まじめに答えた私。
でも、それを聞いた蒼真はまた大爆笑。
なにがそんなにおもしろいんだ。
彼はしばらく笑っていて。
息をついたあと。
「暁をどうやってとめたのかと思ったら、スマホ投げつけてとめたのか!俺が暁を殴ってもとまらないのに、すごいね美鈴ちゃんは!」
ぽんっと、私の肩を叩いた。
「……私、たくさん迷惑かけたのに怒ってないの?あと、私がスパイだって疑ってたりとか……」
「なにも怒ってないし、もう疑ってたりもしないよ。もちろん一条組の人らも怒っても疑ってもいないから心配いらない。むしろ美鈴ちゃんには感謝してる。殴り続ける暁をとめてくれたからね」
聞けば、笑って返される。
……なにも怒ってないし、一条組の人たちからも疑われてもない?
その言葉を聞いて、心には安心感が広がっていく。