月夜に笑った悪魔


と、とりあえずよかったけど、感謝ってなんだ……。
私、感謝されるようなことはなにもしてないよ?


っていうか、なんだ。
『俺が暁を殴ってもとまらないのに』って。




思い出すのは、ぐったりしている和正を殴り続ける暁。
私がスマホを投げつけなかったら……たぶん、ずっと殴ってた。



「暁、殴り続けるととまらないの……?」


ふと、疑問を口にしてみる。


「暁はあんなことがあったからね……。その恨みで月城組の人間は容赦なく殴り続けるんだよ」


殺すまでね、と小さく付け足した声を私は聞き逃さなかった。



ゾクッとする。
血まみれの暁を思い出し、彼ならやりかねない、と思ったから。



その数秒後に思ったのは、“あんなこと”とはなにか、ということ。



「……あんなこと、って?」


あんなになるまで殴るなんて、よほどのことがあったにちがいない。
答えてくれるかわからないが声を出せば、「聞いてない?」と私の目を見る蒼真。


私は、ゆっくり頷いた。

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