月夜に笑った悪魔
「暁は……大丈夫なの?」
「脱走したり暴走したりするたびに麻酔打って眠らせてるんだ。今は眠ってるだけだから大丈夫。でも……これ以上動くとさすがの暁もまた傷が開いて危ないかな」
その言葉で、思い出したのは吉さんが以前持っていた注射器。
あれを暁に打って、眠らせていたっけ。
あれは、麻酔だったんだ。
「暁はもともと痛みに鈍いんだよ。だから傷があることにも気づかない時があるし、余計危ない。
……美鈴ちゃん、少しの間だけでも暁のそばにいてあげてくれないかな」
瞳をまっすぐに見つめられ、私はすぐに頷いた。
できることならなんでもしたい。
私は暁にいつもお世話になっているし、彼にケガを負わせた身なんだから。
「ありがとう」
蒼真は微笑んだあと、吉さんに声をかけて。
暁を隣の部屋のベッドの上へと寝かせた。
隣の部屋は、ものがあまりない部屋。
大きなベッドとソファ、机の上にはパソコン、それしかない。
「私はここにいます」
ベッドの脇へと腰を下ろし、私は暁が起きるのを待つことにしたのだった。