月夜に笑った悪魔


暁は普通にしているけど、ぜったい平気なわけがない。
撃たれているわけだし、私がスマホを投げつけたせいで頭に包帯だって巻いて……。


頬に絆創膏も貼っているし、見ているだけでも痛々しい。


私は立ち上がって、深く頭を下げた。




「あの……本当にごめんなさいっ!そんなにケガさせたのは、私のせいで……。私が、和正とちゃんとお別れしたいって思わなければこんなことには……!」
「いいって──あ、やっぱだめ、許さない」


返された返事は途中で切られ、言い直された。


……そりゃあそうだ。
こんなに大ケガさせたんだから簡単には許してもらえないよね……。



「本当にご──」
「キスしてくれたら許す」


もう一度謝ろうとすれば、言葉は遮られて。
聞こえた声に顔を上げれば、彼は口角をあげて笑っていた。


「……えっ」


き、キス!?
今、キスって言った!?



「撃たれたとこ痛いし、誰かさんにスマホ投げられてぶつけた頭が1番痛い。あと、好きな女が元カレに会いに行って心も痛い」


そう言った彼は、やっぱり笑ってる。

これは……おもしろがってるな。

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