月夜に笑った悪魔
膝をついて少し近くで暁の顔を見れば、それだけでも心臓がドキリとする。
彼が着ている黒いシャツ。
そのシャツのボタンは上から3つも開いていて、溢れ出す色気。
……もう、なんでいつもこんなに色気がすごいんだ。
だ、大丈夫。
一瞬、ほんの一瞬で終わる。
自分を落ちつかせようと思っても、どうしても暴れてしまう心臓。
もちろんキスの経験はあるし、暁とキスするのだって別にはじめてじゃないのに……!
暁が無駄に色気が出てるからいけないんだ……!
「俺に近づくの、怖い?」
固まっていると、聞いてくる彼。
……暁のことを、怖いと思ったこともあった。
和正を殴り続けて、悪魔のように見えた時。
「あの夜は怖いと思ったけど……今は平気。今も怖かったらここにいない」
思ったことを素直に答えた。
怖かったのは、あの夜のあの少しの間だけ。
暁があんな悪魔のようになってしまう理由も聞いたから、本当に今は大丈夫。
「……そっか。怖かったらここで寝たりなんかしないか」
笑い混じりに答える彼だけど、怖がられるのを気にしてたりしたんだろうか。