月夜に笑った悪魔


「…………」
「ずっと会いたかったんだから行くなよ。もうちょっと……つーか、今日はここに泊まれば」


突然の誘い。
泊まれば、なんて……。


暁は、本当に私に会いたいと思っていたんだ……。
ケガしてるのに、脱走してまで。



「……なんで、会いたいと思ったの?」


気になったことが口から溢れ出る。


……ただ、知りたかった。
暁が思ってることを。




「好きだからだろ。好きな女には毎日会いてぇじゃん」


返ってくる言葉。
その言葉に、大きく心臓が鳴る。


それと同時に……思い出したのは、暁と会わなかった間にずっと考えていたこと。




若頭にケガをさせて狙撃されるかもとか、あの夜の暁のことを思い出していたけど、その他にも考えていた。



それは、暁は和正──私の元カレが月城組の人間だと前から知っていたのか。


私の元カレが月城組の人間だとわかったうえで、私を家に住まわせていたのか。


本当は“好き”という言葉は嘘で……私を近くにおけばまた月城組に接触できるかも、復讐のチャンスがあるかも、と思っていたのではないか。




……いろいろ、考えすぎなくらい考えた。

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