月夜に笑った悪魔


「な、なんで、そんなこと……月城組は、一条組と敵対する組なんでしょ?月城組の人と付き合ってた女をそばに置こうとか、普通は考えないんじゃ……」
「好きな女なら放っておけねぇだろ。男にフラれたなら自分のもんにするチャンスだって思うだろ」


「す、“好き”って……暁は本当に私のこと好きなの!?私のこと本当は好きとかじゃなくて、月城組の復讐に利用してたとかじゃないの!?」


袖をつかまれていた手を振り払って、彼と向き合う。

……ついに、言ってしまった。


これでなんて答えるのか。
答え方によっては──……。






「利用とか、そんなんじゃねぇよ。
……言っておくと、俺のほうがあの男より先におまえのこと好きになったんだからな」


暁は口を開いて、今度は私の手に触れた。
力ない手で、緩く握られる。






「……え?」


聞こえてきた声に、思考回路が数秒間停止。



“あの男”というのはもちろん和正のことで。
……暁は、和正より先に私のことを?


いや、結局、和正は私のことを好きじゃなかったみたいだけど……。

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