月夜に笑った悪魔
もう、ここまで来たらキスの5回でも10回でもしてやる……!
そんなに変わらないし……!
「はやく目、瞑って!」
今日なん度目かわからないその言葉を口にして、彼は笑ったあとに目を閉じる。
それを確認したあと、私はさっきと同じように顔を近づけ……。
触れ合う唇。
これで答えてくれる、そう思ってすぐに離れようとした時。
──急に後頭部に手がまわってきて、離れるのを阻止された。
「んんっ!?」
強い力のせいで離れられなくなって、唇は重なったまま。
しっかりと、伝わってくる柔らかい感触。
な……っ!?
麻酔、まだちゃんと切れてないんじゃなかったの!?
力が弱いのは演技だった!?
彼の胸を押そうとすれば、急に口内に差し込まれた舌。
それは私のものと絡み合って……。
漏れる熱い息。
ただでさえ熱かった体。
さらに熱くなって力が入らなくなる。
……──溶けていくみたいだ。
「……あっ」
つい出てしまう声。
恥ずかしくて必死に我慢しようとしたけど、そうはさせてくれなかった。