月夜に笑った悪魔
でも……数秒たっても触れられることはなく。
ゆっくり目を開けてみると、大きな手は私に触れる寸前でピタリととまっていた。
「昨日の夜みたいに触ってほしーの?」
口角を上げて、笑う男性。
「な!?」
……まるで悪魔みたいな人だ。
それはあまり考えたくないことなのに。
本当に私はこの男性に抱かれてしまったのだろうか……。
『私たち、昨夜しましたか?』なんて恥ずかしすぎて聞けるわけなんてないけど。
「腹減った?」
「……へ?」
急に聞かれるから、思わずマヌケな声が出る。
なんで急にそんなことを聞くのか。
答えられずにいれば、目に入ったもの。
……男性の露になった、体。
きれいに割れた腹筋、骨ばった鎖骨。
溢れ出る色気に、ドキドキと心臓が暴れる。