月夜に笑った悪魔


「上手、というか……。前は毎日してたから、まぁそれなりにメイクの知識はあるほうだと思う」


誰だってメイクをはじめるのに、最初は初心者。
私はとにかくネットで調べて、何本もメイク動画を見て、知識を身につけた。


「私、涙袋がうまく書けなくて……!教えてください、美鈴先生!」


手をぎゅっと握られ、輝いた瞳で見つめられる。


千梨は……人との距離が近い子だなぁ。


由美とのことがあって友だちがいなくなった私は、女の子と話す機会もそうそうなかったから変に緊張する。
前はどうやって話していたんだっけ。




「先生って呼ばれるほどでもないけど、私でいいならいつでも教えるよ」


そう返せば、ぱぁっと彼女は笑顔に。
それからすぐに持っていた鞄の中から何かを取り出す。


「さっそく教えてください、美鈴先生!」


千梨が鞄の中から出したのは、可愛らしい花柄のポーチ。


いつでもいい、とは言ったけどまさか今とは。
別にいいんだけどね。

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