月夜に笑った悪魔
暁が帰ってくるといつも聞こえてくる声だが、今日はやけに人数が多い気がした。
気のせい……?
暁、帰ってきたのかな。
「あっくんかな」
「そうかも」
絵音と吉さんのやりとりのあと、お菓子を食べていた手をとめてすぐに部屋を飛び出す十。
部屋の襖は開けっ放し。
「暁!カブト虫つかまえに行こーぜー!」
そんな声も聞こえてくるから、よっぽどカブト虫をつかまえに行きたいんだろう。
帰ってきたのが暁だったら、一緒に行くのかな。
なんか想像しただけでもおもしろい。
若頭が虫取りって……。
少し想像して思わず笑っていれば、襖がノックされて。
開かれた襖へと目を向ければ、春樹さんの姿。
「失礼します。みなさん、如月(きさらぎ)組がお見えになりました!」
そう言った春樹さんは走ってきたのか少し息が乱れていた。
その言葉を聞いた吉さんと絵音は瞬時に立ち上がる。
……如月組?
「今行くわ」
吉さんはすぐに部屋を出ていく。
絵音は座ったままの私に目を向けて、
「すずちゃん、如月組の組長に会ったことある?」
と、聞いた。