月夜に笑った悪魔
“すずちゃん”って、私……だよね?
っていうかなにさ、如月組って……。
“組”だから、ヤクザっていうのはなんとなくわかるけど……!
みんなの反応からして敵ではないんだよね?
「……会ったことない」
わからないことだらけだがそう返せば、
「じゃあ挨拶しに行こう!せんちゃんも、久しぶりに会うんだから挨拶くらいはしに行こうね」
絵音は私と千梨の手を引っ張った。
強い力に引っ張られ私たちは立ち上がり、絵音のあとについていく。
えらい人なのかな……。
確かにヤクザのえらい人はいっぱいいるだろうから挨拶しなきゃな、とは思ったけどまさか今日だとは。
心の準備が……。
緊張しながらも足を動かして、靴を履いて玄関を出れば……見えたのはたくさんの黒服を着た男性が庭で頭を下げている姿。
そして、その中心に立っているのはグレーの和服姿の男性と、ショートボブの中学生くらいの女の子。
その2人と吉さんと十が話している。
なぜだかわからないが……和服姿の男性を見れば一瞬で動けなくなった。
強面で、溢れ出る威圧感。
纏う雰囲気が、今まで会った人とはぜんぜんちがう。
この男性が如月組の“組長”だというのはすぐに脳が理解。