月夜に笑った悪魔


「昨日さんざん見ただろ?まだ俺のカラダに興味あんの?」


私の視線に気づいたのか、目の前の男性は隠すことはせずにやりと笑う。


意味深な言い方。


“昨日”ってことはもしかしてのもしかして……。

……頭痛がする頭で考えても、記憶が曖昧なせいで真実はさっぱりわからない。


「春樹(はるき)」


自分の体を全く隠さずに立ち上がり、襖を開けて、男性はだれかを呼ぶ。


私はすぐに目を逸らした。
……色っぽい体の全部を見てしまいそうだったから。


「暁(あかつき)さん、おはようございます!服をお持ちしました!」


すぐに聞こえてきた足音と、男性の明るい声。
部屋の向こうに人影が見えたから、私は布団を引っ張って身を隠す。


……あかつき。
それが、この男性の名前。


「あと、メシの用意してやって。俺はいつも通りでいいから」
「はい!すぐにご用意します!」


大きな返事が聞こえると、遠ざかる足音。

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