月夜に笑った悪魔
それからすぐに扉に手をかけて開けようとしたが、開かず。
ガチャガチャやってるうちに、「いーち」と耳に届く。
あまりの焦りで、開けるのを忘れていた鍵。
それに気づいた時にはもう遅く……。
とんっと大きな手が扉に手をついて、「ぜろ」とすぐ後ろで声がする。
「あーあ。時間切れ」
残念でした、と笑う彼。
……悪魔の笑い。
「3秒なんて──んっ」
振り向いて、『3秒なんて短すぎるじゃん!』と文句を言おうとしたのに、それはできなかった。
背後にいた彼に、またキスをされたから。
熱を残してすぐに離れる唇。
今日、何度もキスをしたから体中に熱がまわるのはあっという間。
「……今日はもうなにもしないって言ったじゃんかっ!」
これじゃあさっき言ってたこととちがう。
少しだけ安心してたのに……!
「かわいくて、つい」
彼は口角を上げて笑う。
なんだその理由……!
か、かわいくてって……。