月夜に笑った悪魔
言い返したくても、今の彼には何も言えなくなる。
その裸体を目の前にして、どこを見ていいかわからない。
「そんなに俺のカラダに興味があるなら、触る?」
また視線を逸らしていれば、私は手を引っ張られて。
ぺたっと彼の体を触らせられた。
しっかりとした筋肉。
……聞こえてくる心音は私のものか、それとも彼のものか。
……って!
「やめろバカっ!!!!」
彼の足を思いっきり踏んで、手を振り払い。
鍵を開けて、私は全速力でこの場を逃げた。
日南美鈴、若頭の足を踏んだのは今ので何度目か。
また容赦なく踏みつけたけど、これもしかたない。
……急にあんなことをした暁が悪いんだから。