月夜に笑った悪魔


……ムカつく。


もう、いっそのことくっついて寝てしまおうか。
暁とくっついていれば芽依はたぶん近づいてこないだろうし……。




考えた私は、実行することにした。


彼のスウェットから手を離して、体を起こすとすばやく暁のほうへ。


その大きな背中にピタッとくっついた、その瞬間──。







「っ!!」


くっついた背中がビクッとする。
暁はすぐに飛び起きて、私を見た。


ものすごくびっくりしたような表情で、荒く息をする彼。


まさかこんなに驚かせてしまうとは。
……やりすぎた。



「ご、ごめん……」


目を見て謝れば、彼は立ち上がって襖のほうへと向かっていく。


「暁っ」


声をかけるが、彼は


「……タバコ」


そうただひと言いって部屋を出て行った。

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