月夜に笑った悪魔



***


「今日の運転は任せてくださいねっ!」


沈んだ気持ちになっていた時に、笑顔で声をかけてきたのは春樹さん。


その言葉に耳を疑う。
……運転、って。


「春樹さん、何歳なの!?」
「20歳です!」


にこりと笑ったまま返されて、びっくり。


春樹さんは幼い笑顔で、ずっと年下だと勝手に思っていたけど……年上だったなんて。


ほんと、世の中見た目で年齢を判断しちゃいけないもんだ。
……そう思ったのはこの家に来て何度目かわからない。


「20歳に見えないってよく言われるんですよ。実はこの間コンビニでタバコ買いに行ったら年確されてしまって……」
「えっ」


さらに衝撃的な言葉。
春樹さんが、タバコって。


……20歳になれば法律的に吸えるものだけど。
春樹さんにタバコは似合わない。
この可愛らしい顔で吸ってるなんて想像もできない。


「俺の話より、行きましょうか!美鈴さんも、芽依さんも、車に乗ってください!」


そう言われて靴を履いて。
外へと出る。

< 213 / 615 >

この作品をシェア

pagetop