月夜に笑った悪魔






私たちが乗った車は、バイクで向かった暁よりも先にショッピングモールに到着。


待っている間にフードコートで美味しそうないちごシェイクを絵音がみんなに買ってくれて、今はベンチに座って飲んでいるところ。




「……暁、なんでいつも車に乗らないんだろ」


いちごシェイクを飲みながら、思った疑問がつい口から出てしまう。


これは、すごく気になっていたこと。
学校に行く時も、暁は車に乗らずにバイクで行くから。


車で行ったほうが楽なのに、自分でバイクを運転して行く理由とはいったい……。




「あっくんは事故があってから車に乗れなくなっちゃったんだ。まぁ……あれは事故というより仕組まれた事件、って言ったほうが正解か」


教えてくれたのは絵音。


……仕組まれた、事件?

意味深な言葉。
気になったけど、なんとなくこれ以上は気軽に聞いていいものではないような気がした。



「……婚約者なのに、なにも知らないの?」


スマホをいじっていた手をとめて、じっと私を見つめてくる芽依。


……確かにその通りだ。
私は暁のことをまだちゃんと知らない。


過去のことも知らないし、ヤクザのこともよくわからない。


その通り過ぎてなにも言い返せない。

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