月夜に笑った悪魔


「芽依のほうが、暁のことたくさん知ってるもん」


少し強めに言うと芽依は自分のスマホに視線を落とした。


「…………」


これも、その通りすぎる。
……私は、芽依と暁の絆には勝てない。


一緒にいた時間、2人の思い出に比べて、私は勝てるものがなにひとつないんだ。


私は暁のことを好きかと聞かれたら、まだちゃんと答えられるわけでもないし……気持ちでも芽依に負けてる。





「最初はみんななにも知らないよ!人には人のペースがあるし、少しずつ知っていけばいいんじゃないかなぁ!」


隣に座る千梨はにこりと笑って励ましてくれる。


……少しずつ、か。
……私がまだ知らない暁を、知っていけたらいいな。





そう思ったあと──。





いちごシェイクを飲もうとすれば、急につかまれた手首。

その手を引っ張られて……とある人物に飲まれた。




とある人物というのは、暁で。
彼はいつの間にか私の背後にいて、いちごシェイクを飲むと「うまい」とひと言。

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