月夜に笑った悪魔
本当に、人の心はすぐに変わる。
暁だって……いつ私のことを好きじゃなくなるかわからない。
……そう考えると怖いな。
「美鈴、私たちも行こう……!」
千梨に声をかけられて、はっと我に返る。
「うん」
こくんと頷いて、置いていかれないようにと2人のあとについて行くと……。
芽依が入ろうとしたお店、そこは──ランジェリーショップ。
「暁、芽依に似合うの選んで……」
頬を染めて、少し恥ずかしそうに言う芽依。
そのまま暁の腕を引っ張ってお店に入ろうとするから、私は慌てて暁を後ろに引っ張った。
そして、離れる芽依の手。
「いやいや、だめだから!」
芽依はなに考えてるんだ……!
人の婚約者に下着選んでもらおうとするとか……!
「……おばさん、なにするの」
芽依はまた私を“おばさん”呼ばわり。
暁の手をまたつかもうとするから、私はさらに彼を後ろへと引っ張った。
「こういうのは女同士のほうがいいと思う!」
「芽依は暁に選んでほしいの……!」
お店の前で繰り広げる争い。
このままでは、迷惑になってしまう。