月夜に笑った悪魔
それを聞いた暁は、やっとはやとの手を離して。
私は暁がなにかしないようにと彼の手を引っ張って、はやとから少し遠ざけた。
「ごめん。彼氏とデート中だった?」
申しわけなさそうにするはやと。
私はすぐに答えることができなかった。
これはデートではないし、暁は……彼氏なのかよくわからなかったから。
婚約者ではあるけど……彼氏ではない、のかな?
「彼氏っつーか、俺はこいつの旦那。だから勝手に触ってんじゃねぇ。殺すぞ」
答えられないでいれば、暁はまた低い声ではやとに言って。
私の手を強く引っ張ると歩き出すから、私の足は動く。
「えっ、ちょっ……」
とまりたくても、彼は足をとめることはなく。
はやとに最後になにも言うことなく、引っ張られるようにして私は連れていかれた。
少し歩いたところで、彼が立ちどまったのは非常階段。
ほとんどの人がモール内にあるエスカレーターやエレベーターを利用するから、めったにこの階段には人が来ない。