月夜に笑った悪魔



***


「幼くなったな」


洗面所で吉さんに髪を整えてもらい、顔を洗ってから広い部屋へと移動すると、暁さんは私を見て小さく笑った。


私の顔が幼く見えるのは、昨日のメイクを落としたからだろう。


和正が12コ年上だから、釣り合うようにずっと濃いめのメイクをしていた。
少しでも大人っぽく見えるように。


自分のすっぴんは大嫌い。
子どもっぽい顔をしてるから。


「じゃああたしは行くわね」


にこりと微笑んで、襖を閉めて行ってしまう吉さん。
また暁さんと2人きり。


「座れよ」


部屋の中心には大きなテーブル、その近くの椅子に座っている暁さん。
テーブルのまわりには座布団があるが、私はそこに座るべきではない。そう判断して、その場に正座した。


それを見た暁さんはまた小さく笑って。


「美鈴、昨日のこと覚えてねぇだろ」


笑いながら、私を見てくる。


「……へ?」
「やっぱりな。まぁ、あれだけ酔ってたら記憶飛んでも無理ねぇか」


「…………」


酔ってた?私が?
……なんで?


疑問に思ったが、すぐに思い出す。
私はおじさんからもらった缶の飲み物を飲んで、ふわふわした気分になったのだと。


きっとあれはジュースではなく……お酒。

< 23 / 615 >

この作品をシェア

pagetop