月夜に笑った悪魔
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「幼くなったな」
洗面所で吉さんに髪を整えてもらい、顔を洗ってから広い部屋へと移動すると、暁さんは私を見て小さく笑った。
私の顔が幼く見えるのは、昨日のメイクを落としたからだろう。
和正が12コ年上だから、釣り合うようにずっと濃いめのメイクをしていた。
少しでも大人っぽく見えるように。
自分のすっぴんは大嫌い。
子どもっぽい顔をしてるから。
「じゃああたしは行くわね」
にこりと微笑んで、襖を閉めて行ってしまう吉さん。
また暁さんと2人きり。
「座れよ」
部屋の中心には大きなテーブル、その近くの椅子に座っている暁さん。
テーブルのまわりには座布団があるが、私はそこに座るべきではない。そう判断して、その場に正座した。
それを見た暁さんはまた小さく笑って。
「美鈴、昨日のこと覚えてねぇだろ」
笑いながら、私を見てくる。
「……へ?」
「やっぱりな。まぁ、あれだけ酔ってたら記憶飛んでも無理ねぇか」
「…………」
酔ってた?私が?
……なんで?
疑問に思ったが、すぐに思い出す。
私はおじさんからもらった缶の飲み物を飲んで、ふわふわした気分になったのだと。
きっとあれはジュースではなく……お酒。