月夜に笑った悪魔
それから、彼は急に上を見て。
「あっくんっ!!上!!」
耳に届いたのは焦ったような大きな声。
直後、暁はぱっと振り向いて階段の上へと視線を向けた。
「反応遅せぇよ、一条」
声が聞こえたあと、耳に届いたのは……乾いた音。
確かに聞こえてきたそれは──銃声。
かなり近いところから聞こえてきた。
いったい、なにが起きて……。
──バンッ!
2発目の、乾いた音。
今度は床になにかが落ちた音が聞こえてきた。
私の視界に入ったのは……拳銃と赤い血。
ぽたっと暁の手から血が滴り落ちていく。
落ちた拳銃は、暁が持っていたものだろうか。
……撃たれて、落とされたんだ。
振り向きたいのに、振り向けない。
体が凍りついたように動かない。
……だれ。
だれがいるの……。
さっきまでの月城組の人とはぜんぜんちがう。
見なくてもわかるが、かなりやばいオーラを感じる。
背後にいる人は……絶対ただ者じゃない。
「オンナ殺されたくなかったら動くなよ」
また聞こえてくる知らない男性の冷たい声。