月夜に笑った悪魔
『俺の嫁になることが条件。この条件がのめるんだったら住むとこもメシもやる』
『……それは、幸せになれる?もう二度とひとりぼっちにならない?』
『あぁ。ずっと一緒にいてやるし、幸せにしてやる』
だめ、だめだよ私。
もっと考えてよ……。
そう思っても、
『お兄さんのお嫁さんになる!』
自分の大きな声が耳に届いた。
いろんな理由みつけて、まぁいっか♡とか思った昨夜の自分にお説教したい……。
“お兄さん”って呼んでるのも恥ずかしいし……。
思い出して絶望していれば、
『お兄さんの家どこなの~?』
まだ、音声の続きがあった。
ここは全く記憶にない。
『今本家に住んでるからすげぇ広いとこ』
『本家?』
『一条(いちじょう)組の本家』
『ご飯美味しい?』
『あぁ』
『やったぁ~!楽しみ~!』
『おい、あんま先行くなよ』
『お兄さんも早く来てよ!走って!』
『おまえなぁ』
『…………』
『どした?』
『なんか……急に気持ち悪くなって……~~っ』
それからは、聞くに耐えないもの。
私が吐いたと思われる音と、暁さんが介抱してくれる声。