月夜に笑った悪魔
「月城 岳(つきしろ がく)……!!」
ぎゅっと拳を握りしめて、低い声を出した暁。
今まで聞いた中で、1番低い声。
……動けなくて暁の顔さえ見れないが、その声には怒りが含まれていてゾクッとした。
暁の纏うオーラが一瞬にして変わった。
……私でも恐怖を感じるほどの殺気。
“月城 岳”
と呼ばれた男は何者なんだ……。
コツコツと階段を下りてくる足音。
その音を聞いているだけでも、心臓がドクドク早く動く。
やがて、足音は近くまで来て。
私の視界に映った、革靴。
色白の手が伸びてきて……。
逃げられずに、顎に添えられる。
ヒヤリ。
触れた手は驚くほど冷たい。
添えられた手をぐいっと持ち上げられて、強引に前を向かされ。
視界に入った人物。
目が合ったその時、全身が凍ったかのように硬直し動けなくなる。
今までにないほどの危機感を抱いた。
……まるで、今すぐ殺されてしまうんじゃないかと思うほどの危機感。