月夜に笑った悪魔
2人きりの夜に


「あれ……暁は?」


あんな出来事があってから、私が連れてこられたのは病院。


手のケガはそこまでひどくないから病院に行く必要もないと思ったんだけど……暁が心配したため春樹さんに運転を頼み、私はこうして連れてこられた。


もう診察が終わって、待合室へと戻ったんだけど暁の姿は見当たらない。
バイクに乗って、暁も遅れて病院に来ていたはずなのに。


暁もケガをしていたから、診てもらったほうがいいのに……。




「若頭なら、たぶん屋上にいるかと思います。会計はしておくので、美鈴さんはもしよかったら若頭の様子でも見てきてくれませんか?」


春樹さんは心配そうにそう言って、差し出したのは折りたたみ傘。


「ありがとう、行ってくるね」


私はそれを受け取って、小走りで階段を上った。



聞こえてくる雨音。
病院に来る前は一度やんで、またついさっき降り出したみたい。


急に降ったり、急にやんだりで安定しない天気。


……屋上って、屋根あるよね?
こんな雨の中、さすがに濡れてないよね?



そう思いながらも、屋上のドアへと手をかけた。

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