月夜に笑った悪魔
ガチャ、っと開ければ見えたのは広い庭園。
緑が広がっていて、きれいな花も咲いてる。
屋上が庭園になってるなんてすごいな。
今どきの病院ってこんな感じなの……?
雨音とともに聞こえてくるのは、救急車のサイレン。
緊急外来なのか、その音は近づいてくる。
……暁は、どこに?
きょろきょろと見渡せば、見えた屋根。
屋根がついているのは庭園の一部分だけ。
だけど、そこに暁の姿はない。
あれ?
ここにいない……?
もう一度よく見渡すと。
……ベンチの上で横になっている人物を発見。
そこには屋根はなく、雨が思いっきり当たっている。
その濡れている人物は、ぜったい暁だ。
え……寝てるの!?
雨降っても起きないもの!?
私は傘をさして、彼のもとまで走った。
顔に腕を乗せているせいで、よく顔は見えないけど……私が来てもちっとも動かない。
「ねぇ!雨降ってるよ!」
暁に傘をかたむけて、体を揺すった瞬間。
ビクッと大きく彼の体が動いた。
それから彼は瞬時に起き上がると、私を視界に入れて。
腕を引っ張り……強く抱きしめられた。
折りたたみ傘は手から離れ、地面へ。