月夜に笑った悪魔


「あれは忘れもしねぇよ……。小学校の文化祭の日、教室で1人でサボってた俺におまえは声をかけてきた」
「えっ」


「見ず知らずのやつなのに、作った変な形の貯金箱を急に見せてきてひたすら喋り続けてたよ、おまえは 」
「…………」


な、なんだそれ……。
自分で作った貯金箱を知らない人に見せて、喋り続けるとか変なやつじゃんか……っ!


それもう不審者だよ!?
そんな私のどこを好きになったの!?


「……そん時さ、俺は母親を失ったばっかりだったから気分が沈んでて。
きっとおまえは、俺が暗い顔してたから明るくしようとしてくれてたんだろうな」


思い出すように彼は笑う。


「変な形の貯金箱見せられたあとは、手ぇ引っ張られて連れていかれたのはおまえの教室。
そこでもまたおまえが作った変な形の工作とか、変な絵とか見せられて……変なやつだと思ったよ」


なんか、“変”ってたくさん言われた気がする。
当時の私はおかしいと自分でも思うけど……失礼な人だ。

< 288 / 615 >

この作品をシェア

pagetop