月夜に笑った悪魔


「そんで、1時間くらい一緒にいて……最後に『楽しいことがたくさんありますように』ってミサンガくれたっけ。
その時見せてくれた笑顔がたまらなくかわいくて、今でもよく覚えてる」



それを聞いて、ドキリとする。


“ミサンガ”
それで思い出すのは……手帳に挟まっていた、ピンクと白の刺繍糸で編まれたミサンガ。


きっと、それだ。
……そのミサンガを、今でも大切に持っていてくれているんだ。



私は当時のことを聞いてもやっぱりまったく思い出せない。


でも、嬉しくて。
すごく嬉しくて、胸が熱くなる。



「あれからもう一度おまえに会おうとしたよ。でも、おまえの教室行ったら転校したって聞かされてまじでショックだった」


強く抱きしめられすぎて少し苦しいくらい。
でも、ぜんぜん嫌じゃない。


……そうだ。
私、転校したんだ。


両親が亡くなって、叔父夫婦に引き取られたから……。


もし、転校しなかったら暁とその時から仲が良かったかもしれないということ。
それってすごくない?

< 289 / 615 >

この作品をシェア

pagetop