月夜に笑った悪魔


「別になんもしねぇよ」


ふっ、と笑う暁さん。
なんだか少し優しい表情。


ちらりと彼の手元を見ると、本当に拳銃もナイフも握られていない。

……殺されない?
いや、まだ安心できない。素手でくるかもしれないんだから。


「そんな警戒すんなって。昨日仲良くした関係だろ?」
「な!?」


思わず大きな声が出た。
“仲良くした”なんて意味深なことを言うんだから。


ほ、ほんとにしたの!?
吐いた女だよ!?


「うそうそ。俺の嫁にするんだし、焦る必要はねぇからしてねぇよ」


目を見開いていれば、2回目のデコピン。
手加減をしてくれたのか、痛くはない。


……してないんだ。
そこはほっとひと安心。


だけど、嫁にする、なんて本気で言っているんだろうか。


吐いた女だよ、目の前で吐いた女。
最悪なところしか見せてないよね?


そもそも、結婚って好きな人とするものじゃ……?
暁さんはイケメンだし、女の子なんて選び放題のはず。私より可愛い女の子なんて世界には溢れるほどいるのに。


吐いた女と本当に結婚する気があるの!?
なんで!?
私は昨夜、酔った勢いで承諾したけどさ!?

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