月夜に笑った悪魔
「もう離さねぇからな」
「……うん。離さないで」
聞こえてくる声に強く頷く。
「なぁ、俺に1コ約束して」
「うん?」
「おまえは……絶対、死ぬな」
不安そうに耳に届く声。
暁は、大切なものを失っている。
……だから、心配なんだろう。
「……暁、顔見せて」
私はそっと声を出した。
そうすれば、腕の力は緩んで。
体を離せば目が合う。
「私は死なないよ。生命力はあるほうだから大丈夫」
不安そうな瞳の彼に、まっすぐに返す。
今までどんな不幸があっても、生きてこられた。
だから生命力には自信がある。
「暁こそ、私を1人にしないでね」
「あぁ」
返事が確かに聞こえるとゆっくり顔を近づけて、キスをひとつ。
それからコツンとおでこをくっつけて。
「……今日、一緒に寝よ。まだなんもしねぇから」
甘く誘うような声。
「……向き合って寝てくれるなら」
昨夜のこと、私はまだ少し根に持ってる。
暁が私に背中を向けて寝たこと。
「決まり」
約束をして。
私たちは、また唇を重ね合わせたのだった──……。