月夜に笑った悪魔
「日南さん、ちょっといいかな」
授業が終わったあと、私に声をかけてきたのは歴史の授業を担当している永瀬(ながせ)先生。
声をかけられて、ビクッとした。
なぜなら……さっき返してもらった歴史のテストの点数が、0点だったから。
テストというのは、夏休み明けにやったテストのこと。
それなりに勉強していたつもりだったんだけど……テスト中ものすごい睡魔に襲われて、こんな点数になってしまった。
ビクッとした理由は、それだけじゃない。
テストを返されたら、私は思いっきり爆睡していたんだ。
……全面的に私が悪いんだけど、これは怒られるやつだと確信。
「……はい」
小さく返事をして、席を立って。
先生と一緒に教室を出た。
永瀬先生は、黒縁メガネをかけた50代くらいの穏やかそうな男の先生。
……今まで怒ってるところなんて見たことないけど、いったいどんなふうに怒るんだろうか。
こうゆう穏やかそうな人ほど、鬼のように怒るのかな……。
ビクビクしていれば、到着したのは社会科準備室。