月夜に笑った悪魔
彼をじっと見て待っていると、通話は数秒で終了。
暁はスマホを耳から離してタップしたあと、反対のポケットから何かを取り出して。
「そういえば、これ渡そうと思ってたんだった」
忘れるとこだった、と彼は私に取り出したものを手渡す。
手渡されたもの、それは……一台のスマホ。
「……これ、は?」
「おまえの。必要な連絡先とかもう入れといたから」
「私の!?」
返された言葉に、思わず大きな声が出た。
「ないと不便だろ」
……いや、そんなことはない。
スマホって、ぜったい必要なものではないと思うんだ。
スマホがないと死ぬわけでもあるまいし。
「気持ちは嬉しいんだけど──」
「俺が持っててほしいんだよ。電話で声聞きてぇし、会えない時は連絡とりてぇし。いつでもおまえに俺のこと考えててほしい。
だから、持ってて」
スマホを返そうとすれば、押し付けられるように持たされる。
……そう、思っててくれてたんだ。
それはすごく嬉しい。
暁は、私のことを想ってくれている。
「……あ、ありがとう」
私はそれを素直に受け取った。