月夜に笑った悪魔


隼人も、数学も赤点とってたのか。


歴史の補習の時は隼人の姿を見たけど、数学の補習の時はいたっけな……?
まさか、サボってた?


「数学はダメ」


私は歴史の冊子だけ彼に渡して、数学は机の中にしまった。


「お願いします、女神様っ!」


何度もお願いされるけど、ダメなものはダメ。


「難しいから自分でやったほうがいいよ。歴史って暗記すればなんとかなるけど、数学って解き方理解しないと追試でできないし」


見せてあげたい気持ちはあるけど、あとで痛い思いをするのは隼人だ。


「そこをなんとか……!」
「今日から頑張れば終わるよ。……たぶん」


私もまだ終わってないから、ちゃんと言えないけど。


「俺、今日もバイト入れててさ……やる時間なくて。つーか、数学は昔から死ぬほど嫌いなんだ!」
「バイト入れてるのは自分の問題じゃんか。学校じゃなくてバイト優先するのもどうかと思うんだけど」


「そうなんだけどさ……。どうしても休めなくて……」
「……バイト先の先輩が鬼怖いとか?」


「いやそうじゃなくて……。実は今、俺のお袋が入院してて、入院費稼がないといけなくてさ……」


少し暗い表情になって小さく言う彼。

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