月夜に笑った悪魔
……隼人の両親が離婚した、とは聞いていたけど。
お母さんが入院してて、バイト時間増やすほど大変だったなんて……。
それだったら。
「いいよ、貸してあげる。あ、英語は?英語赤点とった?」
私は数学と英語の冊子も机の中から出して、彼に見せる。
英語も全部終わったわけではないけど。
「えっ、まじ!?英語も貸して!」
隼人は驚いたように冊子を見て、私はそれを手渡せば。
「ありがとな、美鈴!あとでなんか飲み物奢るから!」
彼はすごく嬉しそうに笑う。
眩しすぎる笑顔。
「えっ、いいよ別に──っ」
声を出していたところで……急に強い力で手を引っ張られた。
私の手を握るのは大きな手で。
とんっと軽くぶつかった体。
嗅いだことのあるいい匂い、それからそのぶつかった人が手に持っていたパックのフルーツ牛乳が目に入った。
「俺のになんか用?」
聞こえてきたのは暁の声。
いつの間にか、暁が私の教室内へと来ていた。