月夜に笑った悪魔
これで少しは暁に伝わった、かと思って彼を見ると「じゃあ……」と彼は口を開く。
「俺以外の男とベタベタすんな。仲良くすんな、触んな。視界にも入れんな」
……そんな、無茶な。
視界にも入れんな、って……無理では?
一条組にいるのは、ほぼ男じゃんか。
私は一条組の人たちと仲良くしたいし、本当に無理だよ?
「…………」
「なんでそこで黙るんだよ」
黙っていると、こつんとくっつくおでことおでこ。
顔がさらに近づくから心臓がドキリとする。
「いや、だって……普通に考えて無理でしょ」
「無理じゃねぇよ」
「無理──っ」
口を開くのと同時、重ねられる唇。
開いた口のあいだから舌が差し込まれ、あつい熱が口内に侵入。
「ん……ぁっ」
胸を押しても、少しも離れてくれない。
これ以上なにも言わせてくれない。
この男は一瞬にして私の余裕をぜんぶ奪って、思考回路を鈍くさせる。
すべてがどうでもよくなって、甘い熱に溺れていく。