月夜に笑った悪魔


「近いってば……!」


彼の胸を押すが、少しも離れてくれる気配はなく。
「俺のこともっと好きになった?」と聞いてさらに迫り来るから……




「惚れなおした!好きだ、バカっ!」


勢いでそう返した。

それを聞いた暁は、満足そうに笑って。




「おまえってよくバカって言うよな。美鈴のほうが実際バカなのに」


なんかすごく失礼なことを言ってくる。


……いや、まぁ、確かに暁のほうが頭はいいんだけど。
私より勉強できるし……。


「私のほうがおねーさんなんだからバカにしないでっ!」


でも素直に認めるのはなんか悔しくて、そう返した。


「じゃあおねーさん、このあと部屋来る?」
「へ?」


彼は口角を上げて聞いてきて。
突然話が変わるから、間抜けな声が出る。


「マンションの部屋」


付け足すように彼は説明。


「…………」


マンションっていうのは、以前行ったあのマンションのことだろう。


車内にいた時に時計を見たら23時過ぎだったから……これは、泊まるか聞かれているってことで。

つまり……、そーいう誘い。

< 335 / 615 >

この作品をシェア

pagetop