月夜に笑った悪魔
「近いってば……!」
彼の胸を押すが、少しも離れてくれる気配はなく。
「俺のこともっと好きになった?」と聞いてさらに迫り来るから……
「惚れなおした!好きだ、バカっ!」
勢いでそう返した。
それを聞いた暁は、満足そうに笑って。
「おまえってよくバカって言うよな。美鈴のほうが実際バカなのに」
なんかすごく失礼なことを言ってくる。
……いや、まぁ、確かに暁のほうが頭はいいんだけど。
私より勉強できるし……。
「私のほうがおねーさんなんだからバカにしないでっ!」
でも素直に認めるのはなんか悔しくて、そう返した。
「じゃあおねーさん、このあと部屋来る?」
「へ?」
彼は口角を上げて聞いてきて。
突然話が変わるから、間抜けな声が出る。
「マンションの部屋」
付け足すように彼は説明。
「…………」
マンションっていうのは、以前行ったあのマンションのことだろう。
車内にいた時に時計を見たら23時過ぎだったから……これは、泊まるか聞かれているってことで。
つまり……、そーいう誘い。