月夜に笑った悪魔
「あー、あとは、敬語とか使わなくていいから。気楽にしてていいし、俺のことは呼び捨てで呼べよ」
……気楽に、って。
えらい人に敬語を使わないとか、私の命大丈夫?
「ど、どこかから狙撃されたりしません?」
心配になってきょろきょろとまわりを見るが、今のところ誰にも見られていなさそう。
「狙撃って。そんなことじゃされねぇよ」
ふっと笑われる。
“そんなことじゃ”ってことは、それ以外だったら狙撃される可能性があるのか。
なんて怖いことを思ったが、怖すぎて深く考えるのをやめた。
……とりあえず、これからまわりはよく見るようにしよう。
「わ、わかった。気楽にする」
返事をしたところで……。
ぐぅ~、とこの部屋に音が鳴り響いた。
これは、私のお腹の音だ。
は、恥ずかしすぎる……っ!
そういえば昨日のお昼からなにも食べてないけどさ!?別に今鳴らなくたっていいんじゃ!?
自分を恨むが、鳴ってしまったものをなかったものにできるわけもなく。
目の前の彼──暁に笑われた。