月夜に笑った悪魔


その人の顔をじっと見て……私は、自分の目を疑った。


暗くてよく顔はわからない。

ちゃんとは見えないけれど……その男性を見て、知り合いに似ているような気がしたんだ。



……いや、でも、そんなわけない。
その人がここにいるわけない。


だって、バイトがあるって言ってたから。
それに、こんなところにわざわざ来る理由もわからない。




手から出てくる嫌な汗。

ただその男性を見ていると、男性は木造校舎の前を行ったり来たり、中へと入ろうか迷って……。
とうとう、中へと入って行った。



……これは、怪しい。





手を握る暁をちらりと見れば、彼は男性が入って行ったところを見つめていた。



黒い瞳が確かに男性をとらえ、ゆっくり上がる口角。



……まるで、月城組を狩るのを楽しみにしているかのような、その表情。


その顔を見て、ゾクッとした。

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