月夜に笑った悪魔


教室内を覗けば、古びた机と椅子、ロッカーまでまだちゃんとあった。


でも、どう見てもやっぱりここは廃校。


窓ガラスはほとんど割れているし、床がこれではさすがに使えないだろう。




よく見ていると、暁は急に近くの教室内に入り。
私の手を強く引っ張ると、扉の後ろに隠れた。



抱きとめられて密着する体。
急なことにいろんな意味で心臓がドキドキ。



彼は私から体を離すと自分との位置を変えて。
私は彼の背中へと隠される。



「あ、あか──」


声を出そうとすれば、唇に当てられた人差し指。
これはしゃべるな、ってことだ。






こくりとうなずくと……。


ギシッと軋む音が耳に届いた。

これは、誰かが歩く足音。

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