月夜に笑った悪魔
ケガ人にこんなことをするなんてひどい女だ。
……自分でも、強くそう思う。
でも、私がそうしたところで彼はやっと私を見てくれて。
彼は瞬きを繰り返すと落ちつきを少し取り戻したようで、大人しくしてくれる。
もう布が見つからないから自分の制服のブラウスを脱ぎ。
それを彼の傷口に当てて止血。
「そんなことしなくても死なねぇよ」
暁は私の手をとめようとするけれど、「大人しくして!」と強く言う。
とまらない血。
それを見て嫌な考えが頭をよぎり、体が小刻みに震える。
ど、どうしよう……。
そ、そうだ、救急車も呼ばないと……!
「ちょっと待ってて……っ」
私はブラウスを彼の傷口に当てたまま立ち上がり、森へと走る。
スマホはまだあの森の中。
急いで救急車を呼ばないと、暁は……。