月夜に笑った悪魔


「お気持ちは嬉しいですが、大丈夫です!美鈴さんは学校があるので気にせず準備してください!
あ、これは若頭に頼まれていたものになります!」


持っていたおぼんを奪われて、春樹さんは革製のスクールバッグを私に手渡した。


スクールバッグ?
暁に頼まれたものって?


バッグの中を開けてみると入っていたのは、ランチバッグと水筒、白のペンケースの3点。


私は和正のところを飛び出した時になにも持ってきていなかったから、必要なものを用意してくれたんだ。


教科書はふだん持って帰ったりしていなかったから、ぜんぶ学校にある。これで授業が受けられるや。


「今度、美鈴さんの好きな食べ物を教えてください!お弁当に入れますので!
学校、頑張ってくださいね!」


春樹さんは最後にぺこりと頭を下げると、去っていく。


……お弁当!
春樹さんが作ってくれたんだ!?


「ありがとう!」


私はうしろ姿にお礼を伝えた。



本当に、なにからなにまで気を使ってもらっている。
すごくありがたい。

すごくありがたい、けど……やっぱり申しわけないな。


この家にいさせてもらって、掃除も洗濯も炊事もやらないって、私はどこの貴族だ。


やっぱり、自分にできることくらい探さないと……!





そう強く思ったあとは、学校へと行く準備。
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