月夜に笑った悪魔


「美鈴ちゃん、念のためにこれを持っててほしいの」


そう言って吉さんに渡されたのは、ケースに入った注射器。
これは──麻酔。


「使いすぎると体によくはないんだけど……使わないと暁が暴走してとまらないことが多々あるからね。美鈴ちゃんも持っててくれない?」
「……わかった」


小さく返事。
それから使い方を教えてもらって、数分で病室へと戻ると。






私が病院に来た時は暁は麻酔で眠らされていたのだが、彼はもう起きていた。


「美鈴、こっち」


なにごともなかったかのように、私を手招きで呼ぶ彼。



また病院を抜け出そうとしたこと、私が知らないとでも思っているのか。
残念だけどもう聞いたあとだよ。


バカ……!!


溢れ出す怒り。

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