月夜に笑った悪魔
私は病室のソファの上にあったクッションを手に取り、それを暁に向かって投げた。
けれど、パシッと受けとめられ彼には当たらない。
「なに──」
「バカっ!!」
彼の言葉を遮って、大きな声を出す。
「なんで……なんで、自分を大切にできないの!?なんでいつも無茶ばっかりするの!?もっと自分のこと大切にしてよ!」
怒りはおさまらなくて、もうひとつのクッションも手に取り彼に向かって投げた。
……でも、やっぱりそれも簡単に受けとめられてしまう。
「バカっ!大バカ……っ!」
暁が目覚めない間、どれだけまわりが心配したと思ってるんだ。
私がどれだけ怖い思いをしたと思っているんだ。
大切な人を失う辛さをよく知ってる暁なら、わかるだろう。
……私は、ずっとずっと、暁が目覚めない間不安と恐怖でいっぱいだったんだよ。
失うかもしれない、って思ったんだよ。