月夜に笑った悪魔
私たちより、明らかに年上の男性。
一条暁という男は、年上の人たちも従えているのか。
きっと暁は私が思っている何倍も、何十倍もすごい人なんだろう。
つられるように私もぺこっと頭を下げて、靴を履き替えて外へ。
「おはようございます!」
外へと出ると、また目に入った黒服姿の男性。
その男性は玄関の扉が開いた瞬間に、深く頭を下げた。
「こちらどうぞ」
数秒間頭を下げて、男性がぱっと顔を上げると暁になにかの鍵を差し出す。
「おう」
暁はそれを受け取ると、「おまえは車な」と私に言って。
彼は近くに停めてあったバイクに跨ると、さっき受け取った鍵をバイクに差し込んだ。
そして、聞こえてくるエンジン音。
どうやら、彼が受け取った鍵はバイクの鍵だったようだ。
「美鈴さんはこちらにどうぞ」
そう言われて、ついて行くと案内されたところに停まっていた1台の黒塗りの車。
ドアを開けて、乗るようにと促される。