月夜に笑った悪魔


ぱちりと合う視線。
目が合うと彼は、


「治ったから帰ってきた」


とひと言。





……治ったんだ。
それはそれは、本当によかった。



私は気を失ったようにすっと目を閉じて、動きを停止。



必殺技、狸寝入り。



ちょっと……というか、かなり無理があるかもしれないけど。
どうしてもまだ、暁と話したくなかった。



私は『関係ない』んだもんね。
暁にとって私は、心を許せる存在でもなんでもないんだ。




「ヘタクソか」


ふっと笑う声が聞こえてくる。
……寝たフリ、って絶対バレてる。


それでも、私は絶対に目を開けてやらなかった。


どんなに声をかけられてもすべて無視。
そうすれば、やがて足音が遠ざかっていって……襖が閉められる音。

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