月夜に笑った悪魔



***


「美鈴は1人でも大丈夫だよな?ただの熱だし」
「……うん」


「あ、そうだ。悪いんだけどシャツ洗濯しといてくんない?洗濯しないと明日着るのなくてさ」
「……あとでしておくからいいよ」


「ほんとありがとう。美鈴、愛してるよ」
「……私もだよ」


「じゃあ行ってくるから」
「……行ってらっしゃい」






パタン、と閉まるドア。


「……早く帰ってきてね」


和正に届くことのない声。


直接言うことができなくて、閉められたドアに向かって小さく言った。



本当はそばにいてほしかった。
熱を出した時くらい、近くにいてほしかった。


でも困らせたくなくて……なにも言えず、部屋で1人。



寂しい気持ちも悲しい気持ちも、苦しい気持ちもぜんぶ胸の中にしまった。

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