月夜に笑った悪魔




「──……こんなとこにいたのかよ。ほら、こっち来い」



ふと、頬に触れるあつい熱。

そのあとぐいっと体を引き寄せられて、あたたかい体温に包まれる。



……あれ?
帰ってきてくれたの、かな……。




「かずまさ……」


袖をぎゅっとつかんだ。
すると、強く抱きしめられて。



「おまえのカレシは俺だから」


今度は耳元で声がする。


……和正の声じゃない。
これは……




「……あか、つき?」


ゆっくり目を開けると、見えた畳の部屋。



……そうだ、私が今いるのは一条組の家。
……和正は、夢か。



「そう」


抱きしめられたまま、優しく頭を撫でられる。
その手は……すごく気持ちいい。

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