月夜に笑った悪魔


暁なら、そばにいてくれるかな……。
ワガママいっぱい言ってもいいかな……。




「……そばにいて」


小さく呟くように声を出せば。


「わかったから、病院行こ」


ふわりと浮く体。

私はそのまま運ばれていく。



体があつい。
頭が痛くて、寒気がする。





「……離れないで」


外に出て、車に乗せられて。
離れていく彼の袖をつかんで引きとめる。


「…………」


黙り込む暁。


押し寄せる不安。
じわり、と目に涙が浮かぶ。



迷惑だったかな、なんて思ったあと……思い出したのは。

暁が、車に乗れないということ。

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